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老境の武道 第六弾辰吉丈一郎老いてなおリングに立つ孤高の拳

6月22日
読了時間: 3分

人は誰しも老いる。


それは世界チャンピオンであっても例外ではない。


若い頃は誰よりも速く動けた。


誰よりも強く拳を振るえた。


しかし、歳月は平等に訪れる。


筋力は衰える。


反射神経も落ちる。


若い頃には見えていたパンチが見えなくなる。


それでもなお、戦い続けた男がいる。


元WBC世界バンタム級王者。


辰吉丈一郎である。


私自身、辰吉選手と直接の接点はない。


しかし、その生き様には武道家として深く心を打たれるものがある。


辰吉丈一郎はボクシング界でも稀有な存在だった。


決して恵まれた環境で育ったわけではない。


少年時代は貧しかった。


だが、彼は誰よりも強く世界を目指した。


そして世界王者になった。


しかし、その後の人生は決して順風満帆ではなかった。


網膜剥離。


敗北。


引退勧告。


数え切れない逆境。


普通ならそこで終わる。


多くの人は栄光の思い出を抱いて静かに生きる。


だが辰吉は違った。


何度倒れても立ち上がった。


周囲から


「もうやめろ」


と言われても、


リングへ向かった。


そこには金銭や名誉では説明できない何かがあった。


私は長年武道を続けてきた。


世界大会も経験した。


脳梗塞も患った。


肝細胞癌で余命半年と宣告されたこともある。


両膝はボロボロになった。


若い頃のようには動けない。


それでも道場へ向かう。


それでも子ども達の前に立つ。


なぜか。


それは戦う場所があるからだ。


人は目的を失った時に老いる。


年齢で老いるのではない。


挑戦をやめた時に老いるのである。


辰吉丈一郎の姿は、それを教えてくれる。


勝つためだけではない。


誰かに認められるためでもない。


ただ、自分自身に負けないために戦う。


老境とは衰退ではない。


若さを失ったあとに始まる第二の修行である。


辰吉は今もなお、その修行の道を歩いている。


私は思う。


本当に強い人間とは、


最後まで夢を捨てなかった人間ではないかと。


六十を過ぎた今、


若い頃のような強さはない。


だが、


人生の苦しみを知った強さがある。


病気を乗り越えた強さがある。


人を許せる強さがある。


そして、


今日も前を向いて歩く強さがある。


辰吉丈一郎の拳は、


もはや相手を倒すためだけの拳ではない。


人生そのものを背負った拳なのである。


老境の武道とは、


勝ち続けることではない。


何度倒れても立ち上がることである。


辰吉丈一郎は、


そのことを私たちに教えてくれる。


押忍。

老いてなお、挑戦を諦めない真の勇者
老いてなお、挑戦を諦めない真の勇者

 
 
 

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