いよいよ、この男について書く時が来た。 元WBF世界クルーザー級チャンピオン、西島洋介。 かつて「西島洋介山」の名でリングに立ち、日本人離れした体格と拳で、世界のクルーザー級に挑んだ男である。 彼は単なる元チャンピオンではない。 日本ではまだ重量級ボクサーが珍しかった時代に、たった一人で重い扉をこじ開けようとした、日本重量級ボクシングの開拓者であった。 華やかな世界王者という肩書きの裏側には、誰にも語れない苦労があった。 試合が組めない。相手がいない。評価されない。それでも拳を握り、海を渡り、世界に挑んだ。 私は西島洋介を、ただの有名格闘家として見てきたのではない。 十五年来の親友であり、時には弟のように思い、時には一人の武道家として、その背中から学ばせてもらった。 彼とのエピソードは、正直、一回では書き切れない。 笑える話もある。泣ける話もある。リングの裏側の話もある。共に大好物のスイーツを食べながら語り合った人生の話もある。 だから今回から、西島洋介という男を、シーズンものとして書いていきたい。 第一回は、まず彼の「強さ」ではなく、彼の「不器用な優しさ」から書きたいと思う。 西島洋介は、強い。 だが、彼の本当の魅力は、拳の強さだけではない。 人を裏切らないところ。仲間を大切にするところ。一度心を許した相手には、少年のような顔を見せるところ。 世界のリングで戦った男でありながら、どこか人懐っこく、どこか寂しさを背負い、それでも前を向いて笑う。 私はそんな彼を見て、何度も思った。 「ああ、こいつは本当に格闘技に人生を捧げた男なんだ」と。 チャンピオンベルトを巻いた人間はたくさんいる。 しかし、人生そのものがリングになっている男は、そう多くない。 西島洋介は、その数少ない一人である。 これから少しずつ、私が見てきた西島洋介を書いていく。 表の顔だけではない。テレビや記事では伝わらない、一人の男としての西島洋介。 世界に挑んだ拳。挫折を知った背中。それでも笑って生きる魂。 そのすべてを、十五年来の親友として、弟分を見守ってきた者として、私なりに記していきたい。